【手仕事】塩らっきょう(乳酸発酵)の作り方

本格的な乳酸発酵の塩らっきょうづくり

まずはじめに乳酸発酵のこと

先日、乳酸発酵について調べていると、東京家政大学大学院客員教授の宮尾茂雄先生の寄稿文があり、そこから乳酸発酵における重要なポイントを知ることができました。以下ほかの文献なども含めた要約です。

①発酵初期に Leuconostoc mesenteroides(ロイコノストック・メセンテロイデス) などの「乳酸球菌」が増殖する(炭酸ガスやエタノール、EPSなどを産出)。

②その後、Lactiplantibacillus plantarum(ラクチプランチバチルス・プランタルム)やLevilactobacillus brevisなどの耐酸性のある「乳酸桿菌」が優勢となる(ほぼ乳酸菌だけを産出)。

このように乳酸発酵は初期から後期にかけて異なる乳酸菌が活躍していたのでした。

さらに、これらの乳酸菌に最適な塩分濃度は2.25 %で、3.5%になると特に①が著しく抑制されるとのこと。pH低下にも弱く乳酸発酵が進むことで②へ移行すると考えらます(この塩分のらっきょうなら塩抜き不要のはず)。

スクロースを添加すると有用成分が産生する

また、別な研究から①の乳酸菌にグルコース(ぶどう糖)やフルクトース(果糖)ではなく、スクロース(ショ糖・砂糖)を与えたときのみに「EPS」を多量に産生し、その産生量は、一般的な乳酸菌と比較して300倍以上というのです。

そのEPSとは人が摂取することで、腸内細菌の構成を変化させ、基礎代謝の向上や免疫の調整などに関わり、体に良い働きをする「短鎖脂肪酸」の産生量を増やすという物質です。

これらを踏まえた乳酸発酵のレシピを作り、実践したところ大成功。

このことから塩分量を2.25%以下、あえて砂糖を少量加えて作ってみたレシピです。(乳酸発酵のレシピでは塩分が2.25%以上のものがたくさんありますが、まずは塩分で保存性を高めるのではなく、乳酸菌とpHを下げることによる保存性を選択しました。乳酸発酵がうまくいかない場合は、一度水洗いして塩分をあげるか、甘酢漬けや醤油漬けにしたほうがよいと思います)

 

塩らっきょうの分量

下処理を終えたらっきょう1kg

水500ml+塩35g(2.25%)+砂糖15g~

 ※お好みで赤唐辛子や昆布を

らっきょうは生命力が強いため、玉ねぎなどと違い収穫後にもどんどんと生長します。届いた日に漬け込むことをおすすめします。

 

格的な乳酸発酵の塩らっきょうの作り方

 

  1. 上下を切り落とす:よく切れる包丁で茎の出ているほうと根を切ります。
    ※根の部分は深く切り過ぎないように。硬いところのギリギリ上を狙って。
    ※茎の長さはお好みですが、やわらかいところは食感が悪くなります。
    ※2つにくっついているものは2つに割ります(薄皮のなかで分けつしているものも)。
  2. 水洗い:水を張ったボールにらっきょうを入れてよく洗います。
  3. 皮剥き:一度ザルにあげて薄皮を剥きます。薄皮の下の皮が柔らかい場合はその皮も剥きます。
    ※仕上がりはつるっとした状態です。
  4. 水洗い:再度よく洗ってザルにあげて水を切っておきます。
    ※雑菌増殖を抑えるために50度のお湯で洗う方法もあります。雑菌は減少し、乳酸菌などは大きく変化しなかったという研究結果もあります。
  5. 塩を振る:分量の半量をらっきょうに混ぜ合わせて少し置く。
  6. 水を加える:分量の塩と砂糖を溶かした水とらっきょうを清潔にした容器に入れる。
    ※水はらっきょうが完全に浸るまでが適量です。少ない場合は同じ塩分量の水を加えます。
  7. 乳酸発酵スタート:常温でそのまま保存し、一日一回軽くゆらします。
    ※つけ汁が少し濁りはじめ、泡が出ていることが乳酸発酵の第一ステップです。
  8. 確認:10日ほどで、つけ汁を味見して酸味があれば成功です。
  9. 展開:2週間ほどしたら塩を若干に加えて長期保存用にする。
    一部を甘酢漬けにする、醤油漬けにするなど。八角や花椒、ハーブなどもおすすめ。
  10. 保存:冷蔵庫が無難だと思います。食べ始めても、らっきょうが漬け汁に漬かった状態にしてください。
    ※臭いがおかしいな、と思ったら、一度水洗いして同じ塩分量の塩水に漬けかえるか、甘酢着けや醤油漬けにしてください。

 

 

2024年5月、初チャレンジの状況。

2週間ほどが経ち、しっかり乳酸発酵していたので成功(液が濁っていても問題ないようです)。保存に備えて塩をやや追加しました(当初の狙い通り塩抜き不要の仕上がりです)。
・別に漬けた小瓶もまあまあ成功。醤油麹漬け(真っ黒な仕上がりで中に酸味)、ヨンニャク漬け(キムチ感は弱くも◎)、ハーブ漬け(ハーブが弱かったので塩らっきょうに近い)

4週間目に小分けをしました。①そのまま、②醤油と本みりんと昆布を加えて旨味と甘みを加えたもの、③八角、花椒、実山椒の塩漬けを加えた中華風(みかんの皮も入れたらどうなるか)、④ローリレ、タイム、ローズマリー、ディル(すべて生)、胡椒、はちみつを入れたピクルス風。

数日経ったものを試食しましたが、どれも香りがしっかりして楽しめました。また2週間後に味見をします。唐辛子が激辛系だったので辛味が強かったことは失敗。塩らっきょうとしては合格も、万人受けにするためには、少し甘くしなくちゃダメかなと思います。よって、塩らっきょうの乳酸発酵が終わったら一部を酢を使わない甘酢漬けにするのがおすすめです。

冷蔵庫に収まらないこのらっきょうたちは、常温保存でどこまで保存できるか、またここでご報告いたします。怪しい気配(濁り、臭い)を感じたらジップロックに再小分けして冷蔵庫で保管します。

 

誤っている情報やもっとよい方法がありましたら是非お聞かせください。

 

6月になると「有機らっきょう」をこちらで通販しています。

 

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