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Toggle棒だら煮の作り方やレシピはたくさんあります。でも、はじめて作る人にとっては肝心なことが抜けていることに気づきました。
※この記事を書いている時点では、ネット上にはこの情報がありませんでした。それは「棒だらの選び方」(棒鱈には種類があること)についてのこと。棒鱈煮を作られる方にとっては調べることの必要のない基本的な情報だったのかもしれませんね。
棒鱈を購入する前に知っておきたいこと
棒鱈とは・・・
棒鱈は、北海道の稚内や礼文島などが主産地で、さばいた真鱈を塩も使わずに寒風で干しあげた干物のこと。
※塩をした干物「すきみたら」は別物。
江戸時代に北前船によって北海道から上方に流通し、京都をはじめ、西日本、北陸、東北で棒鱈を使った郷土料理に使われています。
とくに鮮魚の手に入らなかった内陸部のご馳走(貴重な食料源)として根付いています。棒鱈煮、棒鱈の甘辛煮、棒鱈の甘露煮、棒鱈の煮付け、いも棒、棒鱈の炊き合わせ、、、
ここ山形では、今もおせち料理やお盆などには欠かせない料理として食されています。
記録によると、干鱈が総称、棒鱈、乾鱈が製造方法の違いによる呼び名のようです。
棒鱈は二種類あり、戻す時間も違う
棒鱈が作られる晩秋から数カ月のあいだの稚内や礼文島は、晴れて風のある日が多く、日中でも氷点下の日があるところ。そのため塩が不要で、天日で干していてもカチカチに凍る場所なのです。
大きく分けて凍干と素干しの二種類。
★まず一つは、自然のまま、凍らせてしまう「凍干」と云われる製造方法です。日中に陽があたれば凍っていた鱈が融けて水がしたたり落ちます。これを繰り返すことで、カラカラに乾燥します。つまり天然のフリーズドライ製法になります。
カラカラ・スポンジ状になっているため、一晩水にさらすことで戻ります。脂肪分や臭み成分も抜けているため、ほろりとした食感が強く、上品な味わいです。
「凍干」タイプのまとめ
戻す時間が短い、臭みがない棒鱈煮が作りやすい「凍干」タイプ。
★もう一つは、凍らせないように一次乾燥させてから寒干しにする、旨味を閉じ込めた棒鱈です。こちらはカチカチに乾燥させた「素干し」の状態です。
棒鱈のねぢれ師走の錦市
カチカチでぎゅっと身が詰まっているため、棒鱈を戻すのに時間がかかる(水を替えながら一週間)、手間がかかる、生臭い、などと云われている所以です。しかし、旨味の強い味わいが楽しめます。
「素干しタイプ」のまとめ
甘味や旨味のある味わいの棒鱈煮ができる。戻す時間は一週間。
山形ではどちらを使っている?
山形の昭和初期の郷土料理の聞き書きや、郷土料理の本を見てみると、戻す時間が一晩とあるものが多いので、山形で使われている棒鱈は、前者の「凍干」タイプの可能性が高いようです。昔はこのタイプが主流だったのではとも聞きます。
京都の棒鱈煮のレシピでは戻す時間が長いものが多く、京都の老舗料亭、北海道の棒鱈製造老舗の方も、こちらのカチカチのものだということです。
棒鱈煮をはじめて作るときはレシピも大事ですが、昔に食べた味わいを再現したい場合は、とくに戻しているときの記憶をたどってみたり、作り手に戻し方の話を聞き、どちらを使用するかを判断してください。(水をかえながら一週間ほど戻していたか、そうでないか)
どちらが本物、偽物?
『乾鱈』
東医宝鑑に「越前の鱈天下第一等なり」とあるが、古くは越前が鱈の名産地であり、乾鱈に加工され京都へ移出され名物の京料理の食材となっていた。乾鱈は棒鱈と呼ばれ今なお京都の伝統料理の食材として受け継がれている。1807年(文化4)『松前産物大概鑑』(阿部屋6代 村山伝兵衛)の「鱈之部」には、干鱈「是ハ鱈三枚に直し頭骨を除キ両身下アゴニ而(て)繋ぎ、干上ケ弐本ニ而(て)壱掛ケト唱ヘ、是を廿疋結立、数四十本壱束ト申候、惣名「棒鱈」とも唱え申候」とある。また、北海道漁業志稿に記述されている「乾鱈」の製造法は、腹部を截開(たちひら)き白子または鱈の子を取り去り、背部を頭の方から割り全身を二分し、頭及び笹目を截放して之を干場に掛け、およそ晴天三五日を以って干揚がる日限の適度とする。乾場は長さ二間以上の杭を立て、之に桁を結び横に早切(さきり)を渡し、地上は尺より低からしめず。乾燥中雨露を蒙るも妨礙(ぼうがい)なし。故に降雨の日または夜中と雖も掛けたる儘放置する。乾燥了(おわ)れば掛場より下し、二貫五百目(9.4キログラム)即ち二〇尾前後を纏め、縦横中間を縄で結び一束と為す。
とあるように、干鱈・棒鱈・乾鱈ともに同じものであり、塩があまり出回らない時代の鱈の加工法であったと思われる。塩が出回るようになると、頭部より尾まで背から裂き、塩を振り掛け天日干しにする「背割鱈」や、内臓等を壺抜きし塩をして、20日程寝かせ水洗いをしてから乾燥させる「棒鱈」など、手の込んだ加工法も現れてくる。
このことから、乾鱈と棒鱈と二種類が存在していることがわかります。
また、原料に真タラを使うものと、スケソウダラを使うものがあり、
真タラのほうが味が上です。
棒鱈の価格は種類によって二倍ほど違う・形状
凍干タイプ・カラカラは、100gあたり500円前後
素干しタイプ・カチカチは、100gあたり1000円前後
二倍ほどの差があります。
形状は、三枚におろした丸のままの一本物(大きいので高い)、カットしてあるもの(量が少ないので安い)、水で戻したもの(価格は高い)などがあります。
棒鱈の下ごしらえ・食べ方・棒鱈煮レシピ
棒鱈の戻し方・水に何を入れる
凍干タイプは、水に入れて一晩(夏場は冷蔵庫など)。棒鱈の戻し方(時間)は早い。
素干しタイプは、水を替えながら一週間程度。
使う水は、水道水(カルキ臭い水道は別)か米のとぎ汁を使います。
棒鱈はどのくらい茹でる?棒鱈を茹でる鍋、時間、水の量は?
水で戻した棒鱈は骨がやわらかくなるまでおよそ3時間ほど水煮します。
沸騰したらアクをとり、弱火にしてコトコト煮込みます。
※棒鱈を煮る鍋の大きさは、棒鱈は重ねずに一段で入るサイズのものを使用します。
※水の量は、カットした棒鱈の2~3倍程度の水を入れます。
※水で戻す時間が長いタイプの棒鱈なら臭みをとるために番茶などを使用します。
※旨味や風味を強くしたい場合はだし汁や出汁パックを入れる方法もあります。
棒鱈煮の作り方・レシピも詳しく説明
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いかがでしたでしょうか。
目的や目指す味わいによって棒鱈を選んで、おいしい棒鱈煮を作ってください。作ってみるととても簡単です。水煮が済んだあとは、魚の煮付けと同じ要領です。数あるレシピの分量はあくまでも目安です。
味付けは、少しずつ調味料を加えることで、お好みに仕上げてください。
自分の舌で完成させてその分量を控えておくことが大切です。
キーワード:棒鱈
カテゴリー:郷土料理