定期宅配について

会報誌「土の声」より 2024年度分

持続可能な全国有機農法連絡会へ 2024.04

▼今号より、米山のこのコーナーをわたし佐藤が担当させていただくことになりました。日ごろの想いや、みなさまに有益となる情報を発信していきたいと思います。毎月、米山のメッセージを楽しみにされていたみなさまには、後任の大きな力不足によって、がっかりさせてしまうこともあるかもしれまん。この点、忌憚なくご意見をいただき、常に成長していきたいと考えております。

▼まず、昨年より米山の体調不良や入院などのご報告も重なり、大変ご心配をお掛けしております。しかし、わたしたちの前に立つ米山は、背筋をビシッと伸ばした精悍な姿。目を輝かせてロマンを語り、大きな声で笑い、鋭く経営方針を打ち出し、安心工房に全力を注いでおります。山形山農場の手入れや種まきもはじまり、こちらも本格始動。どうぞご安心ください。

▼昨年12月、当会の立ち上げ初期に大変お世話になった、有機農業の草分け的存在で農民詩人でもあった星寛治さんが、88歳で他界。大変残念です。有機農業とは持続可能な農業と云われます。

有機農業を個人に焦点を当てると、決してそうではありません。それは後継者の不在。秋田の米山氏、山形市の熊谷氏の田圃は主を失い有機農業が途絶えてしまいました。農業の場合、生涯現役を貫き通すことは最高の人生でありながらも、後継なき場合は、突然の空席を招き、供給に大きなダメージを与えることを何度も目の当りにしてきました。実際に有機農家戸数は減少しており、それだけ難しい課題なのです。

▼全国有機農法連絡会はみなさまの健康を守るために「会」としても生産者にしてもひとつの人生の物語りで完結するものでなく、その想いや志を刻みながらも常に更新され、途絶えることのない存在でなければなりません。このことは、ごあいさつ文などで事あるたびに「みなさまと作り上げた全国有機農法連絡会は持続可能でなければならない」とお伝えしてきたところです。

▼理念を曲げることなく、生産者の意気込みとともに、ひたすらみなさまの健康への貢献を使命としている、わたしたちの全国有機農法連絡会が輝き続けられるようお力添えくださいますようお願い申しげます。

農家の減少 2024.05

▼2050年の日本の農業経営体数は84%も減少し、生産額では半分になると推計がある(三菱総合研究所)。これは2020年の農林業センサス(農水省)をもとに推測されている。つまり担い手制度や集落営農の導入などにより規模拡大が進み、販路には直売所やネット直販が普及し販路も拡大している時代になってからの予測値だ。

▼今、産地を見渡すと、荒れた田畑は増え、引き受け手がなく果樹を伐採する果樹園が簡単に目に飛び込んでくる。ここは果物王国の山形。ふるさと納税では予約を開始すれば瞬間的に完売するほどの需要があるにも関わらずだ。

▼この減少は予想よりも早く加速すると考える。デフレ環境から、新型コロナ、ロシアの侵略戦争により世界情勢が大きく動き、その結果、急激な円安、物価高のインフレ、生産費の高騰と状況が一変した。1997年をピークに可処分所得は下がり続け、野菜の店頭価格への転嫁は一部に留まる。今の野菜高騰は不足によるもの。平年作であれば前年通り、それ以下もある。

▼さらに深刻なのはやはり人手不足と異常気象の二つが大きく立ちはだかっていることだ。生産現場を助けていた海外からの技能実習生は円安により日本を敬遠するという動きがある。就農はもちろん農繁期だけに必要とする人材は集まらず、さくらんぼでも争奪戦が繰り広げられている。さらに温暖化により春の凍霜害のリスクは拡大し、収穫時期の高温により樹上で軟化してしまうなどの被害が深刻になってきた。

▼ほかには年々激しくなる異常気象によって産地リレーが崩壊しはじめている。根菜は春の九州から北上し、秋冬の北海道に至るが、バトンが渡らずに、空白ができることが多くなっている。暖冬ゆえの大雪、凍霜害、長雨、猛暑、台風と毎年のように全国に被害を与えている。リスクの多い季節は作付けをせずにリレーから離脱する農家や、ハウス倒壊など生産基盤に被害があれば新たな設備投資をして再建することは難しい。当然、農業の倒産件数は過去最高で、その内訳は、家族経営の小規模法人から経営手法で受賞する優良企業、スマート農業を行うスタートアップまでと幅広い。

▼農の持続可能が困難になった今、同志でもある全国の提携生産者と可能な限り現地で対話をし、未来を見据えた関係の再構築を続けている。今春、山形で新規就農した若手には、全有連が頼れる存在となるように支援体制を強化していく。これまでの当たり前にこだわらずに、この壁を乗り越えて、みなさまの食を守り続けていきたい。

改正食料・農業・農村基本法成立 2024.06

▼5月30日、改正農業基本法が可決された。改正の大きな柱となるのは、世界的な人口増、気候変動、ロシアの侵略戦争などによる食料や肥料の調達が困難なことを想定した食料安全保障の確保、食料の合理的な費用の考慮、輸出強化で食料生産能力の維持、環境負荷低減の促進、多様な農業者で農地を確保する、スマート技術を活用した生産性の向上などが挙げられている。

▼農業新聞のアンケートでは「適正な価格形成」に期待する声が7割近くに上った。大きな方向性としては妥当にも思う。良い法案になったのではないかと鵜呑みにしてしまうところだが、農政の失敗が今の現状を招いている。改正案は体よく時代に合わせたことを連ねているだけで、その覚悟が感じられない逃げ腰でもある。そのことは次の動きからもわかる。

▼4月4日の衆議院農水委員会の参考人質疑では、この土の声にも寄稿してくださる鈴木宣広先生が意見を述べている。生産者の高齢化で日本の農業が崩壊に向かっているなか、食糧自給率についての政府の義務から農業者への責任転嫁であるとし、今問われているのは、苦しみながらも踏ん張っている現場の農家所得の

改善に直結するのか、農家の疲弊は消費者、国民の命の問題だと認識し、抜本的な政策と予算が欠かせないと意見した。

▼衆院通過後、参議院では共産、立憲民主、国民民主などが廃案に持ち込もうと舌戦を繰り広げてきた。また、食料供給困難自体対策法案では、増産に応じないと罰金を科すなど「戦時食糧法である。戦争でもしたいのか」と非難を浴びせ、関連法案も廃案にする強い動きも見せてきた。

▼全国組織でもある農民連では「これまでの農政に対する反省がないまま、食料自給率を向上させる政府の責任を放棄し、食糧の外国依存を強める」「新規就農支援が欠落し、小規模農家支援が不足している」として9万人近くの反対の署名を集め、衆議院議員会館前でデモを行っていた。

▼農業の現場は大変深刻な状態である。大規模化を推進することは必要なことながら、有機農業をはじめとした中小規模農業にこそ、多様性があり、環境保全につながり、命をつなぐ真っ当な食料を作る力があることは間違いない。食料生産力は国家の根幹を成すものであり、その裏には「いただきます」にはじまる食育、なにより自然の力「旬」を体に取り入れ健康を育むという大きな役割を担っている。農政の点からも、岸田政権の国家観の無さを感じる。

さくらんぼのお詫び 2024.07

▼今年は、フォトニュースでお知らせしてきたように霜対策には神経をとがらせ、開花時期には毛ばたきなどの人工授粉でフォロー。この時期はやや低温で強風の日が多かったので、よければ平年作、またはやや不作との見込みだった。収穫期は高温になる前の6月上中旬であることから、品質は高品質と見込んだ。ところが、気温は高めで推移しながらも、収穫前の6月上旬の朝晩はとてもひんやりとして、さくらんぼが肥大しきる前に赤くなりはじめた。

▼6月5日、目揃え会にて「収穫は10日からだな」と阿部さんと奥山さん。ほかの生産者も同様の声。異例の早さに、こちらはまだ出荷伝票も用意しておらず、あわただしく準備がはじまった。週が明けて収穫がはじまると、強い日差しで東京より5度も高い連日の30度越え。この時期にはありえない気温となった。こうなると熟度は一気に増し、さくらんぼが軟化してしまう「うるみ」が心配され、スタートダッシュをかけることにした。しかし、人手は限られ、①「やや不作」、②「小粒傾向」、昨年の猛暑の影響で③「双子果」が多く収量が上がらない。④「うるみ」による廃棄も多く、わずか1週間ほどで「柔らかくてお終いだ」という声も多数出た。地元では直売所の行列に並んでも入手できず「さくらんぼ難民」として話題となっていた。

▼結果、市場では入荷が5割減で5千件近くの注文がお届けできず、ふるさと納税では山形市でおよそ2割の1万件、寒河江市は4割、天童市は3割の発送ができないという誰も想像していなかった「大凶作の年」となった。

▼なんとかお届けしたいとスタッフ一丸となって最後の一箱まで手を尽くしたが全量に至らず。もう少し早くお届けの危うさについて情報発信できたはず。これを反省するとしても、気象が荒れ狂った時代に「お届けできない場合がある」と記すほか手立てがない。

▼何より、生産者の手取りが減少し、大凶作から3年、挽回できることなく、さらに苦しい経営状況となった。それでも、果樹のダメージの回復は絶対怠れない。資金が危ういなかでも上質な肥料で樹をいたわり、体力をしっかりと補い、来年につなげ、これから夏、秋果物にも最善を尽くし、少しでも手取りを補わないと営農持続が困難となってしまう。そこのサポートもしていきたい。

健康と農業を守るための未来価格 2024.08

▼全有連の夏の定番、高橋さんのとうもろこしの値段は1本198円。値上げの要請を受けながらも、とうもろこし1本が200円を超えるというのは躊躇した。これは長いあいだ馴染んだ値ごろ感が頭にあるからではないか(ほかは値上げさせていただいているが)。このとうもろこしも往復1時間以上をかけて集荷している。その時給とガソリン代などの経費も加算されている。価格の調査をしてみると、スーパー並みの価格である生協で213円。大手宅配は400円を超えていた。あきらかに時代は変わったと感じる

▼農業の現場では、物価の高騰により相当な負担が強いられている。それだけではない。将来に予想されていた異常気象が今襲来し大減収を招き、日本だけでなく全世界で問題となっている。ほかには暖冬により、カメムシやウンカなどの虫も多発している。山形の山間部でも雪が少なくなりイノシシが越冬し個体数が増え、その被害も増えている。

▼高齢の農家の離脱は、高齢だけが理由でなく、このような要因が重なっている。もっと稼がなくてはならない中堅、若手にとっても深刻でこの世代の離農にもつながっている。これは事実だ。

▼テレビや新聞などで先進的な取り組みをする生産者や高級ブランドを築く生産者にスポットライトがあたり、日本の農業に未来があるように見える。が、それはほんの一握り。とくに小規模生産者は「平年作でトントン」という精一杯の目標にむかってひたすら生産活動を続けている。平年作が維持できない、もしくはその挽回をしなくてはならないなら、平年作を見込んだ価格ではもうもたない。

▼価格が上がれば買い控えにつながる。現在のお米もそうだ。小麦の高騰から一旦需要が高まったが「今まで見慣れた価格」が少しでも高くなったり、特売がなくなるだけで動きが一気に鈍る。当たり前のことだが、消費者に選ばれなければならない。給食がなくなる夏休みに食事の心配をしなくてはならない家庭もある。改正農業基本法で期待されていた適正価格を国が推進しようものなら、国民から大バッシングが起こるだろう。しかし、忘れていけないのは、その裏で日本の農業は確実に衰退していることだ。価格高騰を抑えつつ、農業を守ることに必要なのは減税と新時代の戸別所得補償制度になる。

▼みなさまも同じく大変厳しい状況にありながら、当会では生産現場へのご理解をいただき未来の農業を守るための価格を提示できている。その感謝の気持ちを健康を守る力のある農作物を作り、供給することに全力を注ぎ、笑顔が溢れ、希望に満ちた会にしたい。

異常気象時代の農業 2024.09

▼一カ月前、7月25日に山形県北部を襲った「令和6年7月豪雨」。梅雨前線に向かって、暖かく湿った空気が一気に流れ込み、100年以上に一度という線状降水帯が発生し、最上川中流域(戸沢村)や日向川・荒瀬川(酒田市)、鮭川(鮭川村)が越水氾濫した。山形県によると、住宅被害は2000棟近く、被害総額は889億円に上るという。

▼有機米を食べる会の堀会長、斎藤氏は、山間部で土砂災害のあった酒田市八幡地区に住む。斎藤氏の自宅は床下浸水の被害にあった。稲は穂先を残して冠水した。管内の田圃では7割で浸水・冠水被害が発生したという。幸いにも出穂前だったので、両氏ともに、現在、無事に稲穂をなびかせているという報告にはほっとした。

▼一方、庄内でだだちゃ豆を作る渡辺さんの圃場では、平野部の畑には畝間を覆いつくす土砂が流入。高原にある畑は土砂流入被害のあった酒田市大沢地区の先にあり、道が復旧した2週間後に行ってみると、ひと気がなくなったこともあり、獣害も増えてかなりの減収となった。全有連生産者だけでもこの被害。農業被害は111億円に昇る。条件に関わらず復旧作業に助成金が行き渡り、農業の持続につなげてほしい。

▼先週の29日に巨大台風10号が九州に上陸した。地元新聞では「特産のオクラが倒伏、ミカンの木は折れ、ブロイラー水死も…農業県を直撃、台風の爪痕に農家ため息・涙出る」などの見出しもあった。

▼温暖になったことで台風は巨大になり、豪雨も多くなり、農業に厳しい時代となった。自然の異変はすべてに連鎖する。虫の越冬率が高まり、異常発生も大問題となっている。柑橘の幼果を加害する「果樹カメムシ」の大発生により、愛媛の無茶々園さんでは、やむを得ない場合は「農薬を3成分まで」としていた基準を、現場が「あり得ない状況」になり「最大9成分」に引き上げた。稲作では数年前からイネカメムシが大量発生。農薬でも防除が難航し品質を著しく低下させている。

▼有機農業は、これまでの自然を前提に確立してきた。有機JAS圃場では、化学合成農薬を一回も使用できない。これまでの技術で対応できなければ、作付け自体が困難になる。これからの時代は、自然と人への関わり方は有機農業をベースに、理想として無農薬、有機JAS除いては数回の農薬が農作物と収入を救うのであれば許容するべきである。また作業の多い有機農業と引き換えに人間が耐えられない炎天下のなかの作業も強いてはいけない。異常になった自然と対峙する生産者の健康と収入を守る農法が持続可能な農業なのだから。

異常気象時代の農業 ② 2024.10

▼農作業の予定を立てるのに天気予報はなくてはならない。今では新聞やラジオ、テレビを見なくても、手元で最新の情報を見ることができる。とても便利な時代になった。しかし、巨大な勢力のまま九州に長く居座った「台風10号」の予想進路とその後の進路は全く異なるものだった。つぎに発生した「台風14号」は中国大陸に上陸し、そのまま北上するかと思っていると、高気圧と偏西風に進路を阻まれて一気に日本列島へ逆戻りした。台風は秋雨前線へ流れ込み、その勢力は拡大。そして能登半島の被災地域に容赦なく土砂災害を引き起こし、稲刈り前の新潟、山形、秋田にも豪雨をもたらした。

▼リアルタイムで雨雲の状況を詳細に確認できる雨雲レーダーもあるが、降雨予測を確認した後に天候が急変してゲリラ豪雨がやってくることもある。雨は農業にとって恵みの雨となるはずだが、ゲリラ豪雨は農業基盤を破壊する。

▼これから収穫する人参や大根、白菜やキャベツ、ブロッコリー、葉物などは夏に種まきや定植をする。豪雨となれば、勢いよく降り注ぐ大きな雨粒が(ときには雹までもが)葉に打ち続けてダメージを与える。表土から跳ね返ってくる病原菌はその葉に侵入する。太陽と大地の境界である表土は流され、土中にしみ込んだ雨水は肥料を流し、雨水が溜まれば土中の酸欠を引き起こす。その後に猛暑が再び戻る。野菜や果樹、畑は回復しているように見えるが、ダメージは計り知れない。幾たびも豪雨となれば、長い時間をかけて耕してきた畑の地力は弱まっていく。

▼生産者たちは経験したことのない環境のなかで農業をしなくてはならない。それも10年に一回ではない。この異常気象は、農家のやる気をもぐら叩きのように潰していくように見える。それでも「やるしかない」と再び立て直し、なんとか収穫にこぎつけ、戦略を練り直して次のシーズンに向けて土づくりをして種を蒔く。その農家魂に、農業は守らなくてはならないものだと再認識させられる。

▼異常気象はますます激しくなっていく。同時に食糧生産の現場が直面する課題はますます増える。持続可能な農業の実現と未来には、農家だけでなく、消費者の支えが必要で、全有連のような産直はそれを実現している。とても誇りに思う。日ごろより応援してくださるみなさまに感謝申し上げます。

▼さらに必要なのは、国、そして社会全体が一体となって取り組むこと。超高齢化、農家減少時代の農業基盤を強くするためには今が最後のチャンスのように思う。石破さん、野田さん、本当に最後です。緊急事態です。

異常気象時代の農業 ③ 2024.11

▼旬の味覚、鮭もサンマもイカも獲れなくなった。サバ缶で人気のサバも激減、海水温の低い深海に生育するマダラも昨年から不漁だという。食卓にのぼる健康に多いに役立つ魚介類が大きく変わってきている。取引先でもある東松島の海苔、宮古のわかめ、石巻の養殖銀鮭、酒田の水産加工業者、千葉のサバ缶などの水産加工業者、伊勢志摩のひじきや海苔、香川県伊吹と長崎のいりこなど全国の漁業関係者から大きなダメージを受けているという報告が多くなった。

▼これらは主に海水温上昇が原因だ。東シナ海を北上する温かい海流の黒潮が北上し、海水温の低い親潮の勢力が非常に弱くなっている。海水温は全国的に2~3度も高い状況が続いている。三陸や北海道では海面水温が異常に高くなる「海洋熱波」の発生が頻発しているという。

▼三陸地方は、大震災もコロナも乗り越えたというのに記録的不漁に加えて、原料費、そしてエネルギー、資材、そして人件費の急騰により倒産も多くなっている。根本に高齢化問題を抱えつつ、日本の食を豊かにしてきた技術をも失われていくことはとても残念だ。 

▼畑も旬が変わった。旬は一週間刻み。春から夏の旬、たとえば、さくらんぼや桃などは旬が10日ほど前進している。夏は猛暑の影響で、本来夏に強いゴーヤは不作で、旬のきゅうりやミニトマトも減収になった。今年から提携をはじめた八ヶ岳などの高原レタスやキャベツも夏の暑い時期にやられて収量は落ち、収穫の切り上げも早くなる。そのバトンを受ける平地では猛暑により、定植を遅らせるしかなく収穫が遅くなっている。そのため、端境期が生まれてしまっている。定番だった夏に生長し秋に収穫するトマトやきゅうりなどの果菜類も猛暑の影響で収穫量が激減してしまった。▼毎年山形の冬野菜である白菜、大根、キャベツは10月下旬あたりから収穫がはじまるものだが、これも夏の猛暑の影響で今年は11月中旬以降から収穫予定となり、二週間ほど遅れている。その後の冬から春にかけて収穫を迎えるミトミさんの春キャベツなどは暖冬により生育が早まり、うまくバトンタッチができるたとしても早期終了してしまい、次の作に葉境が生じてしまうだろう。

▼予定していた作物を皆さまにお届けできないことが増えてしまい申し訳なく思う。同時に生産者にとって大きな痛手であることも心配になる。今年の米価のように2倍に高騰しても消費者の生活は苦しくなる。先日、農水省によって再生産価格の検証がはじまったが、生産費だけでなく、このリスクをしっかりと盛り込んだ価格と消費者負担を抑えるための政策を打ち出してほしい。

今年の農業振り返り 2024.12

▼「雪のない正月」を迎えた2024年。田畑を寒さから守ってくれる雪がなく、春の息吹きを輝かせる雪解け水がないことも心配になった。雪の下で越冬させる大根や白菜、キャベツなども傷んでしまうことも多かった。

▼山形での最初の目標はさくらんぼをしっかり実らせて、みなさまを喜ばせることだった。数年連続で不作が続き、本気で挽回するべく、天候には神経をとがらせ、霜対策も十分行ってきた。開花期は例年よりも早く、毛ばたきなどの人口交配など手を尽くした。さくらんぼの着果量がわかると、これでみなさまによい報告ができると、うれしくなった。いよいよ収穫期を迎えてみると、連日許容を越える暑さになり、結果、果実は傷みはじめ、山形県過去最悪の不作となった。

▼夏は予想通り暑く、豪雨被害は全国であまねく起こり、山形では干ばつながらも、なんとかつないでくれていた。しかし、あの酒田豪雨が起こった。枝豆の渡辺さんの畑がおおきなダメージを負った。そしてその酒田では有機米を食べる会の主力生産者二人がおり、その影響を受け2割近くの減収を招いた。米の作況指数は東北では豊作傾向も、庄内は94と被害は広範囲で数値を引き下げた。

▼みなさまに「お詫びの文書ではなく立派な果実をお届けしたい」としていた秋のりんごや洋梨は、今、無事にお届けがはじまった(もう少し赤く仕上げたかったが)。また、昨年に過去最強猛暑の影響で大減収となった武田さんは、相当な覚悟を持ち努力を続け、里芋も大豊作、大根も無事に越冬準備がはじまった。どちらも追加でご注文いただき、たっぷりと堪能してもらいたい。

▼全体を通しては、西日本の状況はひどく、毎日のように全国各地から連絡があり、月間での収穫予定が変わってしまったり、日々の出荷状況の変更欠品連絡が多かった。野菜セットで代品が多くなったのもそのためだ。約束した野菜がないから欠品するという選択よりも、健康を守る「野菜の量」を減らしてはいけないという判断をしてきた。食卓の計画を乱してしまうことの対策としてここ数年新規の生産者を増やし関係を築いている。今年も八ヶ岳、北軽井沢の高原生産者と提携をはじめた。また新規就農した二人も加わる。今月より天童の岩月ファームから独立した菱沼君のキャベツや、お日さま農園さんから独立したニノト君の小かぶを今週お届けする。

▼異常気象の時代、これまでの旬に捉われずに、作り手とともに努力を重ねていきます。

本年もどうぞよろしくお願いします。2025.01

▼謹んで新春のお喜びを申し上げます。旧年中は格別のご支援を賜り、心より感謝申し上げます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。山形の新年は一面の銀世界で迎えた。久しぶりに本来の雪国らしい風景に包まれました。その静けさと美しさの中で、これまでの心の緊張が少しだけ解けたような気がします。

▼しかし現実は厳しく、12月に乾燥が続いただけで露地栽培のキャベツやブロッコリー、レタスなどの生育が止まってしまい高騰しました。収量の減少により生産者も痛手を負っています。今年の冬は厳しい寒さが予想されていますが、新物の根菜や柑橘類を生産する温暖な産地に大寒波が襲来すれば、春に収穫を予定している多くの作物に深刻な被害が及ぶ可能性もあります。豪雨のない冬でも露地栽培のリスクはますます大きくなり、これまでの「旬」の概念や、従来の産地リレーの寸断も多くなってきています。

▼経験豊富で技術力の高い農家でさえも、常識が通用しない場面が増え、日々生産

基盤である大地を耕しつつ、少しでもリスクを軽減させる栽培計画を練り直し更新しています。

▼私たちが大切にしていることは、生産者が疲弊することなく、再生産に向けて努力できる環境を提供し、健康の源である旬の野菜や果物、米などを供給してもらう関係です。それは環境と人にやさしい生産方式で持続可能でなければならず、生産者は後継育成の責任も伴っています。後継がなければ、全国有機農法連絡会がその後継を別な生産者で補い、持続可能な形にすることです。

▼異常気象が続き「地球沸騰時代」と呼ばれ、これに加えて「農家大減少時代」に突入しています。この厳しい環境のなか、人と人とのつながりを大切にし。持続可能な体制となるように再構築を着実に進めて参ります。

▼今年は激甚災害など生産基盤を揺るがすようなことが起こらずに、生産者と心強いご支援を続けてくださるみなさまに笑顔が溢れる年なりますよう精一杯努力します。本年もどうぞよろしくお願いします。

野菜高騰と新野菜セットについて 2025.02

▼キャベツ、ブロッコリーが高騰している。夏の猛暑、秋冬の干ばつが原因である。落ち着きを見せ始めているが、振り返ると5月にもこの二つの野菜は高騰している。そのときは冬の大雨と3月の寒さが主な要因。つまり供給不足によるもので生産価格の上昇ではない。露地栽培のリスクは非常に高まっている。これが経営難や作付け減少につながるのではと心配する。

▼この冬、群馬の松村さんはキャベツが肥大せずに大苦戦しながらも出荷を続けてくれた。ブロッコリーの深川さんも秋の一作目は病気にやられ、その後はどうしても必要とするところへ小ぶりの規格外を出荷していた。ようやく次作の収穫がはじまり、山形にも届くようなった。どちらも契約栽培が中心なので市場価格より抑えた価格で供給してくれている。減収ながらも長い目で見た場合に乗り切れると判断できることが前提であるがとても助かっている。▼市場の争奪戦ではなく、人と人との関わりのなかで価格形成できることは産直や提携のよいところでもある。全滅を覚悟しながらも種を蒔き続ける生産者とは、再生産価格や減収の事情も考えた取り決めを行い、そして会員皆様を代表した心と心の交流を深化させたい。一方で価格上昇に対応する方式も考えておかなければならない。

▼さて、当会では30年以上にもわたりクール便の利用期間を4月から10月としていたが、暖冬が顕著になり、品質維持のために昨年11月まで延長させ、この3月は前倒しで利用をはじめる。

▼昨年、運送業における2024年問題や物流費高騰の話題が多くなったが、12月にヤマト便運賃の値上げの交渉がはじまった。結果、4月より新価格が摘要されることになった。

▼これまで利便性を考えて野菜セットのタイプを増やしてきたが、時を経て偏りも出始めてきた。これを機に野菜のタイプを見直している。自由枠の固定、品目や品目数、量目、使い勝手などの要望を反映させ、新しい3タイプに集約する予定。

▼わたしたちの野菜セットは、健康を守り、その人生を守り、それだけでなく環境を守り、全国の生産者を応援しその生活を守る有機的なつながりの輪に存在している。

災害支援の基金を設立します 2025.03

▼4月より送料値上げを機にこれまでの野菜セットは新タイプとなります。リニューアルにあたりスタッフが中心となり、セットの集約、品目のバランスを考案しました。まずは4月からの新タイプをご実感いただき、ファミリーやベジタではこれまでと異なるため、ご家庭に合わせて追加や変更、自分で品目を選ぶオーダー注文をご利用頂き、最適なセット作りをお願い致します。

▼今回、仕組みとして新たに加えることがあります。災害支援を目的とした積立て方式の基金の設立です。この土の声で地球沸騰時代の農業の現場をお伝えてしてきたように10年に一度の自然災害が毎年、毎月のように繰り返され、暖冬と云われた今年の冬でさえ豪雪、寒波による被害が容赦なく襲い農家を疲弊させています。

▼とくに平年作でトントンという経営スタイルの小規模農家は、一作でも不作になれば大きなダメージを受けます。みなさまには事あるたびにカンパをお願いし、多大なるご支援を頂き大変感謝しております。

▼この時代に取り組むべき課題は、土を耕し種を蒔く農家のリスクを少しでも軽減させることです。本来ならば国策としての戸別補償が最善であると考えますが、それを待っている余裕はありません。

▼今回の基金の方法は、野菜セットに100円を組み込ませていただき、これを積立てる方法です。災害支援だけでなく、みなさまへの還元など摘要の例にあげるように柔軟な対応をして参ります。

◆積立て想定額=年間120万円

◆摘要の例

①激甚災害見舞金(消費者会員含む)

②異常気象による農業被害支援

③異常気象に関する農業対策支援

④人手不足時の援農費用

⑤規格外・豊作時の応援購入(会員へ還元)

⑥農産物の仕入れ価格高騰時の補填

⑦年度末に積立金未利用額が30万以上の場合に全タイプに1カ月間1品目を還元

⑧その他みなさまのご要望など

◆摘要と報告=全国有機農法連絡会代表が責任を持って判断し、会員に詳細を報告する

▼生産現場では、わずか数日の高温、たった一日の豪雨や鳥獣害でも生活を困難にするほどの収入減となることもあります。また、小さなダメージの積み重ねによって必要な投資や支払いができくなる現状もあります。この基金は少額ながら新時代の産直の在り方として生産者を勇気づけ、より強く結びつき、結果、わたしたちに還元されると確信しております。みなさま、ご理解とご協力のほど宜しくお願い致します。