2005/4/13 東京新聞「本音のコラム」掲載
その後、月刊『五感生活〜ゴカンノサイジキ〜』 2005年4月号 に掲載されました
筆をとっていただいたのはノンフィクション作家・山下柚実さんです。
この記事は東京新聞に掲載後に山下様のメルマガを転載、ご紹介させていただいております。
山下様にはこの場をお借りして厚くお礼申し上げます。

段ボール箱の中から、「春」がやってきた

あなたへの「春のたより」は、いつ、どこからやってきますか?
私の場合は……
突然やってきて、私の仕事部屋を春色に満たしてくれた一個の段ボール箱のお話。
その驚きと、嬉しい気分とを、『東京新聞』連載の「本音のコラム」でこう記しました。


 宅配野菜の味
 段ボールの中から、「花わさび」の束が出てきました。
都会では手に入りにくい春の味。すうっと爽やか。透き通った辛さが印象的。
 段ボールの差出人は、山形県天童市「全国有機農法連絡会」。
実は私、これまで無農薬・減農薬の農産物宅配をあれこれ試してきました。
行き着いたのがこの会。「安全でおいしい野菜を作り、環境を大切に」と地道な努力を続ける生産者の会。
そこで採れた野菜を、数種類まとめて宅配してくれるコースに入ってみた。
普段、スーパーで買い物をしていると、買う商品が段々ワンパターン化し、マンネリに陥る。
けれど、産地から届く野菜の選択は、相手まかせ。
「えっ、こんなものがきた!」という意外性がウレシイ。
それに、野菜の「旬」、一番おいしい瞬間に出会える。
ちなみに「花わさび」を食べたのは初めて。
季節ごとに野菜の種類が次々に変わっていくのも、また楽しい。
そして、生産者の声や気持ちが直接伝わってくる点も、面白い。
先日は段ボールを開けてビックリ。
なんと一番上に野菜ではなく、木の枝が横たわっていた。
よくよく見たら、蕾をつけた桜! 感動。
産地の人たちの、「春を届けよう」という想いが心に響いた。
蕾はいつ開くかな? と花瓶に挿した枝をウキウキしながら眺めています

      

さて、この花は?
そう、この花は「桜」ではなくて、「桃」なんですよね。
植物に詳しい方ならすぐにおわかりになるんでしょう。
ところが、そもそも段ボール箱を開封した日あたりから
「桜前線」のニュースが巷に溢れはじめていたものですから、
てっきり「桜」だと思いこんでしまったんですね。
桜も桃も、バラ科に属し、五弁の花をつける樹木なんですが、少々早とちり、でした。
コラムをお読みになられたみなさまには、大変失礼をいたしました。
どうぞ、この美しい桃の写真に免じて、お許しを。
<山下柚実さんプロフィール>
 山下柚実(やましたゆみ) ノンフィクション作家。
身体と社会の関わりに関心を持ち、美容整形、エイズ問題、五感などをテーマに執筆。
ここ数年は『五感喪失』(文藝春秋)、『ぷっちんもちもち食感漫遊記』(毎日新聞社)、『楽園の音色 フィジー五感の旅』(ピエ・ブックス)、『五感生活術 眠った「私」を呼び覚ます』(文春新書)、『五感で楽しむ東京散歩』(岩波アクティブ新書)、『<五感>再生へ』(岩波書店)など「五感/感覚」についての作品を発表中。
『ショーン 横たわるエイズ・アクティビスト』にて、第一回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
*ノンフィクションの分野の他に、東京新聞の連載コラム「本音のコラム」(火曜日)、共同通信「五感を揺さぶる風景」、中央公論「五感の秘密に迫る」などの連載を執筆中。
*ホームページ「ユズジャーナル」。コラムコーナー「柚だより」では、五感を刺激する興味深い場所をたずねるコラム「五感漫遊記」、書評などを掲載中。

                         http://www.yuzumi.com/

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